多大なネタバレを含んでますので、エンディンクまでクリアした方のみお勧めします。
でないとなんのことやらさっぱりポンだと思います。
パパの懺悔話です。
「ボクは、しくじる訳にはいかなかった」
「何より愛しい彼らのために」
ミックスした過去・現在・未来の情報でボクに飛び込んできた情報は極上のものだった。
「彼女」の「子ども」が二人存在する。
しかも内1人は偶然にも友人のところで出会っていたなんて!
腕輪の情報はとても特殊なものだった。そして特別なものでもある。
間違えようもなかった。
奇縁をつかんだ自分の運を喜びながら、ボクは着実に6年間の努力を集結させていた。
チャンスは最後の手がかりを掴んだそのすぐ後に訪れた。
証拠を消すことだけは異常に上手い彼が起こした2度目のまちがい。
嫌な予感はしてたけど、あっさり手を下しすぎじゃないか?
それとも絶対に立証できない今の法廷の矛盾に甘んじているから発言も甘ったるいものになるんだろうか。
静かに、しかし彼と居るときにつねに感じていた「違和感」は「疑い」に変わり、最終的に「確信」になった。
間違いなく、ヤツだ。
問題はどう火の粉を振り払うかだった。
正直まだヤツを6…7年前の事件と結びつける手立ては揃っていない。
そもそもヤツの息のかからない弁護士なんて早々見つけられるものではない。悲しいことに。
7年前は腐らない真っ直ぐな目をした弁護士もいたんだけどな…。
過去を振り返っている暇はない。
腐らぬ目をした人間は今のところ…1人しか思い浮かばない。
希望多き未来を持つ彼を巻き込むのは本当に可哀相なんだけども、仕方がない。
今ボクは足を折るわけにはいかないのだから。
(そう自分に向かって必死に言い訳してたけど)
(何よりボクは彼らの人生を巻き込んでしまうことを恐れていた)
(それも、今更だったんだけども)
この7年ぶりの法廷はボクにとって7年前の決別の最終章のはじまりとなり、同時に彼らの物語の序章となるんだろう。
ボクは自分の物語に早々に幕を引きたかった。それはボクのやりかたで間違いなく行わなければならない。それが今のボクの信念。
このことを協力者に話したら、「君は全く変わらないのだな」と溜息しながら言われた。
ボクでもわかるよ、そんなことを言いながらキミ、ホッとしただろう?
ボクは変わらないよ。どんなことがあってもね。
(しくじる訳にはいかなかった)
(ボクには空白の7年をずっと支えてくれた娘がいたから)
(彼女の頑張りをも裏切ってしまうことになる)
協力者はボクに「裁判員制度」を取り仕切る権限を与えてくれた。
伊達に海外飛び回ってただけあるね。こんな方法を思いつくなんて。
「お前が7年眠っていた間に私は真実を見つける手段を見つけてきたのだ。」
「私をタダ働きさせるなよ。」
相変わらずキミは判り辛いね。
ようはコレが終わったらボクに法廷戻ってきてキミがした以上の「貢献」をしろってことでしょ?
弁護士として「真実」を見つける手助けをしろという。
本当に判り辛いなぁ。
ボクには彼以外にもう1人、サイバー技術の協力者がいた。
機械下手なボクは上手く情報を管理しきる自信がなかったからだ。
彼はブツブツ言いながらもプログラミングしてくれて、本当にありがたかった。
正直彼はボクを恨んでいるかもしれないとビクビクしてたから、確執を取り除けたことも含め、声をかけて良かったと思う。
何だか見覚えのあるゴーグルは彼なりの自己主張なのかボクに対する嫌がらせなのか。
その時から常にコーヒーの匂いのする不思議なPCはボクの部屋に置いてある。
情報を入れるだけ入れてるけど、実はあまり再生していない。
説明の手間を省くためにボクの思想も自動的に刷り込むようになっているからだ。
・・・あまり自分のナイーブな部分に触れたくないというのもある。
一種のパンドラボックスに近いから、設定してもらったくせにこの事件が終わった後は絶対に使用したくないと思っている。
まさか、彼はコレを狙って作ったんだろうか。
ありえなくもないから恐ろしい。
(準備は着実に整っていった)
(あとはタイミングを計るだけ)
(理性の準備は出来ていったけど、それでもボクの感情は恐怖を訴えていた)
通報した警察が訪れる前、これ見よがしにボクは現場検分を行っていた。もちろん気付かれない程度に。
そしてロジックを組み立てている内に、決定的な証拠が欠けているのにボクは気付いた。
確かに目を引く緋だっただろうから犯人も気付いたのだろう。すり返られている。
フッと暗い考えが頭をよぎった。捏造。
ボルハチはボクのホームグラウンドだ。いくらでも手立てはある。
けれども、重大なリスクがある。ボク自身もある程度、だけどそれ以上に弁護士は致命的なものだ。
7年前なら決して選ぼうとしなかった手段も考慮するようになったのは単に経験と年月を積んだためだ。
バレない程完璧に論証すればいいだろうとさらりと流せるようになった自分はなかなかな狸になったと思う。
しかし、残念なことに貧相なボクの頭は共犯者になってくれそうな弁護士を見つけられなかった。
―――彼しかいない。
最後のスペードを出さなければならない苦悩は計り知れなかった。
決断は他人にして見れば早かったというだろう。
しかしボクは何十回、何百回もロジックを見直し証拠を見直し、さらに捏造証拠を穴を開けるほど眺めざるを得ないくらい追い詰められていた。
―――もししくじったらどうなる?彼の人生をメチャクチャにしてしまう権利がボクにあるのか?
―――あの子の兄を殺してしまう父親に、ボクはなるのか?
―――真っ直ぐ見つめる瞳は、あの子と何一つ変わらなかった。
―――彼の信頼を裏切ることが出来るのか、ボクは!!!
恐ろしかった。
7年ぶりの法廷に立つ前。
ボクは10年近く前から変わらない「やれるのか」という不安と緊張と、10年前では持ち得なかった凶悪なふてぶてしさを持ちながら、論証を頭の中で空転させていた。
ほとんど初対面な成長した彼女の子どもを、ボクは昔のボクのように真っ直ぐに見つめることは出来なかった。
彼の反面教師になるつもりは、当初からあった。
キミは陥れられる隙を作ってはいけない。
今回ボクが仕掛けるような罠に嵌ってはいけない。
「誰より愛おしいボクの子どもたち、君たちを巻き込んで復讐したボクを赦さなくていい」
「ただ、自分の道を過たず進んで」
物語の最終章