2008-05-21 [Wed]
今まで自分で勉強してきた僕にいきなり家庭教師がつくことになった。どうやら父さんの知り合いらしい。やっぱり法律かんけいにかかわった人なのかな。そうだといいな。
「や、はじめまして。怜侍くんだっけ。よろしく」
そうやって声をかけてきた先生は、なんだかちっとも法律とか詳しくなさそうな人だった。春なのにニット帽をかぶってパーカーを着ている。パーカーにはフードがついてるのに帽子をかぶるのはおかしいと思うんだが。
「それはいわゆるおしゃれってやつだよ。」
なんだか先生が言うとうさんくさい気がする。会ってそう間もないのに僕はもう先生に疑いの目を向けていた。
「僕のことは龍一でいいよ、怜侍くん。」
そういって何故か名字を名乗らなかった先生に、その時は不思議に思うだけだった。おかげで僕はずっと先生のことを「龍一先生」と呼んでいた。
龍一先生は見た目はいいかげんそうだったが、じっさいに勉強を教える時には丁寧に教えてくれた。父さんと僕二人だけの家庭で、父さんが遅く帰宅しがちな僕の家に長くいてくれる先生に僕は自然と懐いていた。
父さんの事務所が移転するのにともなって僕の家が引っ越すことになり、そのまま龍一先生と別れてしまったけれど、先生は今でも元気だろうか。名字がわからないのでその後の消息もつかめず、手紙を出すことも出来ないのが残念だと思う。
――僕の給食費が盗まれてしまう、あの事件が始まる少し前の回想。
「や、はじめまして。怜侍くんだっけ。よろしく」
そうやって声をかけてきた先生は、なんだかちっとも法律とか詳しくなさそうな人だった。春なのにニット帽をかぶってパーカーを着ている。パーカーにはフードがついてるのに帽子をかぶるのはおかしいと思うんだが。
「それはいわゆるおしゃれってやつだよ。」
なんだか先生が言うとうさんくさい気がする。会ってそう間もないのに僕はもう先生に疑いの目を向けていた。
「僕のことは龍一でいいよ、怜侍くん。」
そういって何故か名字を名乗らなかった先生に、その時は不思議に思うだけだった。おかげで僕はずっと先生のことを「龍一先生」と呼んでいた。
龍一先生は見た目はいいかげんそうだったが、じっさいに勉強を教える時には丁寧に教えてくれた。父さんと僕二人だけの家庭で、父さんが遅く帰宅しがちな僕の家に長くいてくれる先生に僕は自然と懐いていた。
父さんの事務所が移転するのにともなって僕の家が引っ越すことになり、そのまま龍一先生と別れてしまったけれど、先生は今でも元気だろうか。名字がわからないのでその後の消息もつかめず、手紙を出すことも出来ないのが残念だと思う。
――僕の給食費が盗まれてしまう、あの事件が始まる少し前の回想。
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